採用FAQ:五点セット判例文献ファイル

Q 事件処理において新人に特にたたき込まれることはありますか?

A 五点セットと判例文献ファイルの作成を徹底しています。新人に限りません。

(1)五点セット
当事務所においては、訴訟案件に限らず原則としてあらゆる案件において、時系列表、登場人物等関係図、要件事実ブロックダイヤグラム,争点に関する有利不利表,作業シートをエクセルで作成しています(これを五点セットと呼んでいます。)。
時系列表は、文字通り、事件に関連する事実を時系列に沿って整理した表です。この表は、依頼者の話、依頼者が保有する書類、相手方から得た情報等を総合して作成するので、事件の全体像が見えてきます。この表に、ある事実が発生した時点における当事者の年齢が分かる列を追加したり、あるいは特定の種類の事実のみを抽出したりすることで、別の角度から事件を浮き彫りにすることができ、異なった視点からのアプローチが可能となります。
登場人物等関係図は、事件に登場する人物・会社等の属性をまとめるもので、作成する弁護士自身の整理に役立つことはもとより、事件に関する協議を他の弁護士と行うときにも役立ちます。
要件事実ブロックダイヤグラムは、研修所でも作成していると思いますが、実務でも役に立つツールです。ブロックダイヤグラムを作ることにより、主張立証のポイントが明瞭になります。また、裁判官は記録を検討する際、手控えに要件事実を整理していますので、要件事実ブロックダイヤグラムに基づいて作成する書面は、裁判官にとって理解しやすいものとなります。訴訟の目的は、裁判所に自らの主張を認めてもらうことですので、裁判官が受け入れやすい主張立証をすることは、極めて重要です。
 争点に関する有利不利表は,要件事実ブロックダイヤグラムで把握した争点について有利不利な直接証拠,間接事実をまとめたものでこれにより立証の見通しを立てることができます。  作業シートは必要な調査項目をまとめたものです。

(2)判例文献ファイル

記憶した知識は少しずつ抜けていきます。また、法改正もありますので、常に基本的な知識のブラッシュアップが必要です。事件処理に際して、基本書の該当部分は必ず確認し、必要性と時間的余裕にもよりますが、注釈や関連する論文にもあたるようにして下さい。  これと同時に、関連する判例をデータベースで調べ、解説を読み、さらに引用判例へと芋づる式に調査を進めます。判例は結論のみでなく、事案が重要ですので、事案を簡単な図にまとめ、判例の射程を検討しておくべきです。また、事案の整理、類型化を行うためにエクセルでまとめることが有益な場合もあります。

(3)まとめ

五点セットと判例文献ファイルをきちんと作っていれば、誤った事件処理は少ないと思います。相手方よりも、こちらの方が情報の質量とも優位に立っていると確信できれば、それが訴訟や交渉における自信につながります。よい結果を得るための近道は、地道な努力以外にありません。

以上