判決等
大阪地判令和7年10月24日(令和6年(ワ)第4903号)
大阪地判令和7年10月24日(令和6年(ワ)第4903号)

原告は、いわゆる在日コリアンであり、株式会社Cの取締役最高財務責任者であり、大阪朝鮮高級学校の生徒の保護者で構成するオモニ会の元役員である。
被告は、泉南市議会の議員である。
被告は、泉南市議会の議員として、泉南市が株式会社Cと業務委託契約を締結して株式会社Cに多額の報酬を支払っていることを問題とし、動画投稿サイト等を通じてこれに関する情報発信を行っていたところ、2024年2月2日、その発言が株式会社Cの社会的評価を低下させるものであるなどとして、株式会社Cから損害賠償等を求める訴訟(以下「別件訴訟」)を提起された。
被告は、2024年2月2日、SNS「X」(旧Twitter)に、別件訴訟の提起に関するインターネット上の報道記事を引用する投稿をした上、この投稿に連結して表示される形式(いわゆるツリー形式)で、本件投稿2をした。
その後、2024年2月5日、被告は、本件投稿1及び本件投稿3をした。

被告は、2024年2月6日頃、原告の娘がインターネット上で本件投稿1及び本件投稿3を問題としていることを知り、これらを削除した。
原告のいとこであるD(以下「本件親族」)は、1975年、留学中の大韓民国において、北朝鮮のスパイであるとして連行され、その後、死刑判決を受けたが、2015年、再審により無罪判決を受けた。
本件親族は、その後、書籍を出版するなどして上記の経験に関する情報発信を行っている。
原告は、2020年頃、ドキュメンタリー映画に出演しており、同映画には本件親族も出演していたが、同映画において原告と本件親族との関係は明らかにされていない。
原告は、2022年2月頃、上記映画の上映会におけるトークショーへの登壇を依頼されてこれを引き受けたが、その後、同トークショーに本件親族が登壇することを知り、本件親族が原告のいとこであることを理由に登壇を断るに至った。
原告は、その後、依頼者から説得されて上記トークショーに登壇したが、同トークショーにおいて原告と本件親族との関係に言及されることはなかった。
①本件各投稿の違法性
②原告の損害
③削除請求の当否
裁判所は以下のとおり判示した。なお下線は執筆者による。
投稿等による表現が、人の品性・徳行・名声・信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価(社会的評価)を社会通念上の受忍限度を超えて低下させるものである場合は、名誉毀損が成立する。
そして、ある表現が人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該表現についての一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断される※1。
ただし、他人の社会的評価を低下させる表現であっても、以下のとおり、一定の場合には、違法性阻却等がなされる※2。
第1に、事実を摘示しての名誉毀損の場合は、①その行為が公共の利害に関する事実に係り(事実の公共性)、かつ、②その目的が専ら公益を図ることにあった場合は(目的の公益性)、③摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときは違法性が阻却され(摘示事実の真実性)、仮に真実であることの証明がないときであっても、④行為者において当該事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば故意又は過失が否定される(誤信の相当性)。
第2に、事実を基礎とした意見ないし論評の表明による名誉毀損の場合は、①その行為が公共の利害に関する事実に係り(事実の公共性)、かつ、②その目的が専ら公益を図ることにあった場合は(目的の公益性)、③当該意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには(前提事実の真実性)、④人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、違法性が阻却され、仮に真実であることの証明がないときであっても、⑤行為者において当該事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば故意又は過失が否定される(誤信の相当性)。
プライバシー侵害の成立要件については種々の見解があるが、伝統的見解は、公開された内容が、①私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立つた場合公開を欲しないであろうと認められる事柄であること(換言すれば一般人の感覚を基準として公開されることによって心理的な負担・不安を覚えるであろうと認められる事柄であること、③一般の人々に未だ知られていない事柄であること、という①~③を全て満たすことはプライバシー侵害成立のために必要とする※3。
なおかつ、上記に加えて、判例は、プライバシー侵害については、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するとするため、本人の年齢・社会的地位、公表内容、公表によって本人のプライバシーに属する情報が伝達される範囲と本人が被る具体的被害の程度、公表の目的・意義、公表時の社会的状況、公表の必要性等、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由に関する諸事情を個別具体的に審理し、これらを比較衡量して判断することが必要であるとする※4。
人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有しているが、人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあり、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決される※5。
「総合考慮」の上での「社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうか」の判断は困難を伴うものであるが、判断基準の一定程度の客観化を試みるものとして、デジタルアーカイブ学会は「肖像権ガイドライン」を公表している※6。肖像権ガイドラインは、非営利目的のデジタルアーカイブ機関が所蔵写真をインターネットその他の手段で「公開」するというシチュエーションを念頭においたものであるが※7、考慮要素の項目や重みづけが具体的であり参考になる。
本判決は、名誉毀損について、本件投稿1によって「原告が大阪朝鮮高級学校のオモニ会の元役員であり、そのいとこが「在日留学生捏造スパイ事件」で死刑判決を受けた本件親族であるとの事実」が摘示されていると認定した上で、一般読者の普通の注意と読み方によれば、当該事実は、「本件親族が、北朝鮮のスパイとして非合法活動を行って死刑判決を受けた者であり、その親族であって朝鮮学校とも関係している原告も、北朝鮮による何らかの非合法活動に関与しているのではないかとの印象」を読者に抱かせるものであるから、本件投稿1が原告の社会的評価を低下させるものであると判断している。
一般論として、Aに対する言及がBの名誉を毀損するかどうかは、当該表現の意味内容次第であり※8、したがって、A(本件であれば本件親族)に言及する当該表現に接した一般読者の普通の注意と読み方によった場合に、B(本件であれば原告)の社会的評価が低下するか否かを、個別の事案ごとに判断する必要がある。
本件において、被告は、親族に犯罪者がいることと本人の非行性とは何ら関連がない旨主張したが、本判決は当該主張を斥け、本件投稿1によって原告の社会的評価が低下すると判断した。この判断のポイントとなるのは、上記判示引用部分で下線を引いた箇所であると考えられる。本判決は、本件親族に関する言及の内容(北朝鮮のスパイの嫌疑であること)及び原告側の事情(原告が朝鮮学校と関係を有すること)をいずれも考慮した上で、直接には本件親族に言及している本件投稿1が原告の社会的評価を低下させると認定したものと思われ、上記一般論に沿うものといえる。
関連する裁判例として、平成28年大阪高判※9を挙げることができる。平成28年大阪高判は、政治家Xについて、「Xの実父及び叔父が暴力団組員であったとの事実」や「Xの従兄弟が殺人罪を犯して服役したとの事実」を摘示する内容の雑誌記事について名誉毀損等が成立するか否かが問題となった事案において、下記のとおり判示した上で、「Xの実父及び叔父が暴力団組員であったとの事実」や「Xの従兄弟が殺人罪を犯して服役したとの事実」を摘示することによって、X自身の社会的評価が低下すると判断した。
平成28年大阪高判も、「実父・叔父・従兄弟に関する言及」が「政治家Xの社会的評価の低下」に繋がるメカニズムを具体的に認定しているといえよう※10。
名誉毀損の違法性阻却事由について、被告は、市民への情報提供の目的で本件各投稿を行った旨主張していたが、本判決は、
を挙げた上で、「目的の公益性」を否定している。
本判決が「事実の公共性」まで否定しているか否かは、文言上は必ずしも明確ではないように思われるが、本判決が「事実の公共性」を疑問視していることは明らかであり、そうした判断が「目的の公益性」を否定するという結論との関係で影響しているものと思われる※11。
本判決は、「原告のいとこである本件親族がスパイ事件により死刑判決を受けた事実等」が「みだりに知られたくない原告のプライバシーに属する事実」に該当することを、特段の論証なく肯定しているように読める。
なお、上述した平成28年大阪高判では、プライバシー侵害の成否も問題となっていたが、こちらでも、「実父及び叔父が暴力団組員であったとの事実及び従兄弟が殺人罪を犯して服役したとの事実は、他人にみだりに知られたくない事実である」と特段の論証なく結論付けられている。
スパイ事件・死刑判決云々は直接にはあくまで本件親族に関する内容であるため、それがどのようなメカニズムで原告のプライバシー侵害になるかという点は、検討の余地のある問題であり、例えば昭和39年東京地判〔宴のあと〕※12の挙げる要件への該当性を検討すべきという指摘もあり得るように思われる※13。
ただし、本判決の整理によれば、プライバシー侵害の成否に関して被告が主張しているのは、非公知性に関する主張や、公表されない利益と公表する理由の比較衡量に関する主張であり、本件投稿1が原告のプライバシー侵害になるメカニズムについては被告は争っていなかったようである。
また、本件投稿1が原告のプライバシー侵害になるメカニズムは、名誉毀損の場合と大きくは異ならない可能性があり、もしそうであるとすると、名誉毀損の判断箇所で実質的には判断済みといえるかもしれない。
本判決は、仮に一部の第三者が「本件親族が死刑判決を受けた事実」や「本件親族が原告のいとこである事実」を知っており、インターネット上で検索・閲覧が可能な記事にそれが記載されていたとしても、それによって直ちに当該事実が公知であるとまではいえない旨判断している。
一般論として、ある情報が何人も閲覧し得る状態にあるからといって、当該情報について直ちにプライバシーとしての要保護性がなくなるわけではない※14。
例えば、訴訟記録は所定の手続を履践すれば誰でも原則として閲覧可能であるものの(民事訴訟法91条1項)、実際に訴訟記録の閲覧等をするのはその事件に積極的な関心を有している者等の少数の者に限られるのであって、「情報を公開する制度が存在すること」と「その公開情報を入手して報道することにより不特定多数の者に現実に公表すること」は異なるから、訴訟記録に記載された情報を公表したケースであっても、プライバシー侵害は成立し得る※15。
本判決の事案は、「インターネットで検索・閲覧が可能な情報」を改めてインターネットで公表するものであるが、こうした事案におけるプライバシー侵害の成否は、個別具体的な事情をケースバイケースで考慮し、プライバシーの保護を及ぼすべきか否かを検討した上で判断するほかないと思われる※16。本判決は、そうした個別具体的な事情の一つとして、原告が積極的に秘匿の措置を講じていなかったことの詳細についても認定の上で判断をしているものと思われる。
なお、本判決は非公知性がプライバシー侵害の要件となることを前提としているものと思われ、そうした理解は昭和39年東京地判〔宴のあと〕に沿うものではあるが、非公知性を要件とする必要はない(他の要件の中で吟味すれば足りる)とする見解も存在する※17。
本判決は、本件各投稿に組み込まれている原告の容ぼう等が撮影された画像について、「いずれもインターネット上で既に公開されていたものであり、その内容等に照らしても秘匿性の高いものとはいえない」と述べつつも、本件各投稿が原告の名誉毀損・プライバシー侵害を構成するものであって、それに原告の容ぼう等を撮影した画像を組み込むことは当該侵害を助長するものであって、その必要性を認め難い旨判示して、肖像権侵害を肯定した。肖像権侵害の成否は、諸般の事情を総合考慮した上で「社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうか」によって判断されるから、インターネット上で既に公開されていることで直ちに肖像権侵害が否定されるとはいえず、本判決の判断はそうした理解に沿うものといえる※18。
なお、名誉毀損の判断の中で、上述のとおり本判決は「原告のいとこである本件親族が死刑判決を受けたといった事実が、泉南市による株式会社Cに対する公金の支出の当否と実質的な関連性を有するものとは認められない」等と判示している。このように、被告が公開目的として主張する事柄と本件各投稿の関連性が低いことも、肖像権侵害の成立を肯定する方向の事情として考慮可能と思われる※19。
一般に、ヘイトスピーチとは、「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」をいい、専ら差別的意識を助長・誘発する目的で公然と本邦外出身者の生命・身体・自由・名誉・財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑する等といった行為がこれに該当する※20。
本判決の事案では、原告は、(責任論ではなく)損害論の文脈で、本件各投稿は「民族的・種族的出身に基づく攻撃」であるから、違法性は高度であり、平穏な生活を送ることが困難になり、甚大な精神的苦痛を負った旨等を主張した。すなわち、要旨、ヘイトスピーチであるから損害が大きいという文脈で、原告はヘイトスピーチ該当性を主張していた。
これに対して、本判決は、本件各投稿によって原告が被った精神的苦痛は小さくないと述べつつも、本件各投稿は原告個人の親族関係や活動に言及するが、在日コリアンといった属性一般に着目したものとは認められないから、民族的・種族的な出身に基づく攻撃であるとまではいうことができないと判示した。
なお、一般論としては、漠然と何らかの集団・グループ全般に言及しても、対象者が特定されていないため、名誉毀損にはならないとされる※21。
ヘイトスピーチについても、個人を特定せずに、特定の集団に対する差別的表現に留まる表現は、ヘイトスピーチ解消法上の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に当たるかどうかは格別、被差別集団に属する者全員が表現者に対して損賠賠償等を請求できることになってしまうのは不法行為法が本来的に想定する事態ではないこと、また、差別的表現を一般的に禁圧することは不法行為法の目的ではないことから、原則として名誉毀損の不法行為には当たらないとされる※22。
関連する裁判例として、平成19年東京地判※23を挙げることができる。平成19年東京地判の事案は、東京都知事(当時)が、都立大学に関係するクラブの設立総会において、フランス語について「数勘定できない言葉」「国際語として失格」等と発言し、当該発言が東京都の公式ホームページ内で動画付きで掲載される等したといった事実関係を前提に、フランス語と関係を有する者(フランス語の母語話者、フランス語学校の経営者、フランス語・フランス文学の教員等)が原告となり、東京都知事及び東京都を被告として訴訟を提起し、名誉毀損に基づく損害賠償等を請求したものである。平成19年東京地判は、「数勘定できない言葉」「国際語として失格」等という発言が名誉毀損となるか否かについては、当該発言は「フランス語に関するものであって、特定の個人に対するものではない上、これが真実でないことは明らかであるといえる。したがって、このような発言がされたからといって、原告らを含む特定人の社会的評価を低下させることにはならない。」と判示した。
なお、ヘイトスピーチについて不法行為責任が成立しにくいケースがあることと、ヘイトスピーチが許されるべきでない悪質な行為であることは、別の問題である※24。
不法行為責任は、金銭賠償が原則であるが(民法722条1項の準用する417条)、例外的に名誉毀損については「名誉を回復するのに適当な処分」を裁判所が命じることが可能である(723条)。
本判決の事案では、被告は、本件投稿1・3は投稿の翌日頃に削除したが、本件投稿2は削除しなかったため、原告は、慰謝料・弁護士費用の支払だけではなく、本件投稿2の削除も請求していた。
本判決は、本件投稿2について、原告の氏名・勤務先・容ぼう等を認識し得るものであり、これが残存する限り原告が特定される状態が継続するものといえるから、「名誉毀損による被害を完全に除去、回復するためには、本件投稿2の削除を命ずることが有効かつ必要」であり、かつ、本件投稿2を削除することにより被告の表現の自由が過度に制約されることになるというべき事情は認められないと判示し、723条に基づき、本件投稿2の削除請求を認容した。
一般に、723条の定める「名誉を回復するのに適当な処分」として想定されるのは、表現の削除、謝罪広告等である※25。そのうち特に謝罪広告については様々な議論があるが※26、本判決の事案で原告が求めていたのは表現の削除であったため、そうした議論は問題とならなかった。
なお、本判決の整理によれば、原告の主張は、本件各投稿は「名誉毀損等」の不法行為を構成するところ、その一部である本件投稿2が残存する限り、原告が不特定多数の第三者からの誹謗中傷の対象とされる危険や恐怖が残存するため、被害回復のために本件投稿2の削除が必要というものであった。
これに対して、本判決中の裁判所の判断部分では、「名誉毀損」による被害を完全に除去・回復するためには本件投稿2の削除を命ずることが有効かつ必要と述べている。
すなわち、本件投稿2を削除する必要性について、原告は「名誉毀損等」の被害回復のためと主張していたが、裁判所は「名誉毀損」の被害回復のためと判示しており「等」を付していない。
また、一般に、人格権侵害に基づき表現の削除を求める法律構成としては、原状回復処分構成(723条の適用又は類推適用)と差止構成とがあり、いずれの構成とするかによって要件が異なること等があり得る※27。

本判決が、削除請求の根拠とする人格権を「名誉毀損等」ではなく「名誉毀損」としたのは、この事案では名誉毀損さえ認定すれば723条を適用して削除請求を認容するのに十分であると考えたからと思われる。
※1:最判昭和31年7月20日民集10巻8号1059頁。
※2:最判昭和41年6月23日民集20巻5号1118頁〔署名狂やら殺人前科〕、最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁〔ロス疑惑夕刊フジ〕等。
※3:東京地判昭和39年9月28日判タ165号184頁〔宴のあと〕参照。
※4:最判平成6年2月8日民集48巻2号149頁〔ノンフィクション『逆転』〕、最判平成15年3月14日民集57巻3号229頁〔長良川リンチ殺人報道〕。
※5:最判平成17年11月10日民集59巻9号2428頁〔法廷内写真〕。
※6:https://digitalarchivejapan.org/wp-content/uploads/2023/04/Shozokenguideline-20230424.pdf(2023年4月補訂版)
※7:肖像権ガイドライン・前掲(※6)3頁。
※8:佃克彦『名誉毀損の法律実務〔第4版〕』(弘文堂、2025年)77頁。
※9:大阪高判平成28年11月16日(平成27年(ネ)第3176号)。なお、その後上告棄却されている。
※10:競争法分野では、「theory of harm」(セオリーオブハーム)という考え方が比較的最近になって強調されるようになったとされる(白石忠志『独占禁止法〔第4版〕』(有斐閣、2023年)21頁脚注5)。これは、行為がどのような過程を経て弊害をもたらすのか(行為が弊害をもたらすメカニズム)、という意味であり、新たな考え方ではなく、もとより当然に踏まえるべきものとされる。本判決は競争法分野に関するものではないが、競争法分野でなくとも、重要な論点について、ある行為(Aに対する言及)がどのようなメカニズムで要件事実であるところの弊害(Bに対する名誉毀損)をもたらすかを必要に応じて具体的に検討すべきことは当然と思われる。
※11:なお、佃・前掲(※8)561頁は、「事実の公共性を肯定する場合にはほとんどの場合に目的の公益性も肯定されている。」としている。本判決もこうした見解と整合的と考えられる。
※12:前掲(※3)。
※13:東京地判平成21年1月21日判時2039号20頁は、被告が「原告の配偶者や親族の住所等」をインターネット上の掲示板「2ちゃんねる」に書き込んだ事案で、原告に対するプライバシー侵害を肯定した。この平成21年東京地判について、佃克彦『プライバシー権・肖像権の法律実務〔第3版〕』(弘文堂、2020年)97頁は、「この判決が着目した実態は単に、他人(配偶者)に生じる害に対し原告本人が不安を感じるのはもっともだ、という関係性だけであって、そういう関係性があるからといって、他人(配偶者)の情報を原告本人の情報だと言うことができることにはならず、そこには明らかに飛躍があるのである。」、「この判決は、全く関係のないことをもって原告本人のプライバシー侵害を認定しているといわざるを得ない。」と批判を述べている。
※14:佃・前掲(※13)78頁脚注20参照。
※15:東京地判平成13年10月25日判時1790号131頁。週刊誌が、会社経営者とその妻との民事訴訟の訴訟記録を閲覧して、そこから得た情報を記事にした事案である。平成13年東京地判は、結論としてプライバシー侵害を肯定した。平成13年東京地判は、訴訟記録の閲覧制度等については、「裁判が公開され訴訟記録は誰でも閲覧することができるという制度の下においても、実際に裁判を傍聴し又は訴訟記録の閲覧をするのは、その事件に積極的な関心や問題意識を有している者など少数の者に限られている。情報を公開するという制度が存在することと、その公開情報を入手して報道することにより当該事実を知らない不特定多数の者に現実に公表することとは自ずと質的な相違がある」と判示した。
※16:佃・前掲(※13)192~197頁。
※17:佃・前掲(※13)65~66頁。
※18:肖像権ガイドライン(前掲(※6))は、刊行物等により公表済みの写真であることを肖像権侵害を否定する方向の事情と位置付けており(同ガイドライン5頁の「写真の出典」の箇所)、総合考慮される事情の一つとしている。なお、刊行物等により公開済みであることが肖像権侵害を否定する方向の事情となる理由は、「既に程度多数の目に触れていること、少なくとも当該刊行物等での公表当時には本人から一定の同意が得られていた可能性が高いことなど」が挙げられている(同ガイドライン16頁)。
※19:肖像権ガイドライン(前掲(※6))9頁、24頁。
※20:本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年法律第68号。いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」)2条。
※21:松尾剛行ほか『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務〔第2版〕』(勁草書房、2019年)152頁。同書152~154頁で具体的な裁判例が複数挙げられており参考になる。
※22:曽我部真裕ほか『情報法概説〔第3版〕』(弘文堂、2025年)397頁。
※23:東京地判平成19年12月14日判タ1318号188頁〔都知事フランス語発言〕。
※24:法務省は、「ヘイトスピーチ、許さない。」というタイトルの啓発用のページを作成しており(https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00108.html)、その中で、「ヘイトスピーチは、人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を生じさせることになりかねません。多様性が尊重され、不当な差別や偏見のない成熟した共生社会の実現を目指す上で、こうした言動は許されるものではありません。民族や国籍等の違いを認め、互いの人権を尊重し合う社会を共に築きましょう。」と述べている。
※25:大塚直『新注釈民法(16) 債権(9)』(有斐閣、2022年)544~548頁〔建部雅執筆箇所〕。
※26:例えば、謝罪広告の強制が憲法19条の良心の自由に反するか否か(大塚・前掲(※25)545頁)、プライバシー侵害の場合に民法723条を類推適用して謝罪広告を命じることができるか否か(佃・前掲(※13)262~270頁)、といった議論がある。
※27:大塚・前掲(※25)553~554頁。
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