precedent

判例情報

2025.6.1

棋譜を用いた将棋の解説動画(非リアルタイム)についてYouTubeに対して著作権侵害申告をした行為につき、不競法2条1項21号(虚偽告知)には該当するがそれ以外の不法行為は成立しないという原判決の判断を維持した事例

判決等

知財高判令和7年2月19日(令和6年(ネ)第10025号ほか)
(原判決:東京地判令和6年2月26日判時2608号67頁)

事案

1 事案の概要

当事者

Xは、将棋のAI解説動画などを投稿するYouTuberであり、YouTubeチャンネル(以下「Xチャンネル」)を運営している。
Yは、YouTubeやCSで囲碁及び将棋を中心としたコンテンツを配信、放送する株式会社である。

X各動画のアップロード等

Xは、令和4年1月9日~令和5年1月21日に、順次、X動画1~5をXチャンネルにアップロードした。
動画の内容は、X動画1・2・3・5は、将棋の王将戦の棋譜を用いて解説や今後の予想等を提供するものであり(リアルタイムで棋譜情報を配信するものではなく、1日目の対局終了後に2日目の対局の展開を予想する内容であった。)、X動画4は、将棋の王将戦の全棋譜をAI評価値付きで再生するものである

Yによる著作権侵害申告とX各動画の削除・復元

X各動画のいずれについても、YがYouTubeに対してYの著作権を侵害している旨の申告をして(以下「本件著作権侵害申告」)、これを受けてYouTubeが当該動画を削除して、これに対してXがYouTubeに対して異議申立てをして、これを受けてYouTubeが当該動画を復元する、という経過を辿っている。
各動画に関する各行為の具体的な日付は以下のとおりである。

YのYouTubeに対する本件著作権侵害申告 YouTubeによる動画の削除 XのYouTubeに対する異議申立て YouTubeによる動画の復元
X動画1 R4.2.12頃 R4.2.12 R4.2.28 R4.3.16
X動画2 R4.2.12頃 R4.2.12 R4.2.28 R4.3.16
X動画3 R5.1.9頃 R5.1.9 R5.1.20 R5.2.6
X動画4 R5.1.10頃 R5.1.10 R5.1.20 R5.2.7
X動画5 R5.1.22頃 R5.1.22 R5.1.25 R5.2.27

2 請求・主張(控訴審段階)

Xは、YのYouTubeに対する本件著作権侵害申告に基づきX各動画がYouTubeから削除されたことにつき、本件著作権侵害申告は不正競争防止法(以下「不競法」)2条1項21号の虚偽告知行為に当たるとともに、Xの人格的利益を侵害する不法行為にも当たると主張し、不競法4条及び民法709条に基づき、Yに対して、損害賠償金284万5979円及び遅延損害金の支払を求めた。
また、Xは、控訴審において、「Yは、Xが配信する動画がYの著作権を侵害している旨をGoogle LLCに告げてはならない」という差止請求を追加した。

3 争点(控訴審段階)

Yは、本件訴訟においては、X各動画がYの著作権を侵害したとは主張しておらず、また、本件著作権侵害申告が不競法2条1項21号に規定する不正競争行為(虚偽告知)に該当するとのXの主張を争っていない
そのため、本件訴訟の控訴審における争点は以下の3つである。
(1) 本件著作権侵害申告がXに対する不法行為となるか否か
(2) 損害額
(3) 差止めの可否

判旨

本判決(控訴審判決)は、結論として、本件の事実関係においては、著作権侵害がないにも拘わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止されたものではあるが、不競法1条1項21号(虚偽告知)・4条に基づく損害賠償以外に、人格的利益や表現の自由の侵害等に係る不法行為は成立しないと判示した。
その上で、本判決は、Xに生じた損害額は逸失利益1万6511円(X各動画が削除されたために得られなかった収入)及び弁護士費用のうち1600円(Yの行為との相当因果関係が認められる弁護士費用)であるとし、XのYに対する請求を1万8111円の限度で認容し、その余のXの請求(差止請求を含む)は棄却した。
最終的な判断としては、本判決(控訴審判決)は原判決(第一審判決)の結論を維持し、控訴棄却判決が言い渡された。
本稿では、争点(1)に関する判示を紹介する。なお下線等は執筆者による。

  • 「著作権侵害がないにも関わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止された場合、不正競争防止法2条1項21号(虚偽告知)、4条に基づく損害賠償以外に不法行為が成立するかについて検討する。」
  • 「著作権侵害申告がされると、一定期間YouTubeにおけるX各動画の公開が停止されるが、インターネット上で動画配信サービスを提供するウェブサイトはYouTube以外にも存在しており〔証拠略〕、それらのウェブサイトを通じて動画を公衆の閲覧に供して表現活動を行うことは可能であり、YouTubeでの動画の公開が停止されたことによって、インターネット上で動画を公衆の閲覧に供する手段がなくなるわけではない
    YouTubeはグーグルという私企業が提供する動画配信サービスであり、動画の投稿者は、投稿のためにグーグルに代金を支払う必要はなく、むしろ、動画の閲覧数に応じて、YouTubeで流される広告からの収入の分配を得ることができる。グーグルはYouTubeの動画配信に関する規定、ポリシー及びガイドラインを定めてこれらを公表しており、動画の投稿者は、これらの規定やポリシー等の範囲内で、動画の投稿を行うものとされている。そして、グーグルは、YouTubeにおける動画による著作権侵害への対応として、投稿された動画に対して第三者が著作権侵害による削除通知(著作権侵害申告)を行った場合、当該通知が無効でなければ、動画の投稿者の意見を求めることなく、当該動画を削除(配信停止)し、動画の投稿者は、当該動画の配信の再開を求めるのであれば異議申立てを行うものとしており、このようなYouTubeの著作権侵害に係る制度は、グーグルによるYouTubeの動画配信に関する規定・ポリシーの一つであるといえる。そうすると、YouTubeに動画を投稿する者は、著作権侵害への対応について上記のような制度設計をしているYouTubeを自ら選択して、代金の支払をすることなく動画投稿を行い、閲覧数に応じて広告収入の配分を得ているのであって、著作権侵害申告に対して上記のような対応がとられることを前提として、著作権侵害に関する上記制度を含むものとしてのYouTubeのシステムを利用していると認められる
    そうであるとすれば、YouTubeの著作権侵害に係る制度に則っていることを前提として、著作権侵害がないにも関わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止され、著作権侵害があると考えて著作権侵害申告したことについて過失がある場合、一定期間動画が削除(配信停止)されたことにより、動画の配信がされていれば得られるはずであった収入を得られなかったという経済的損害について不正競争防止法2条1項21号(虚偽表示)、4条に基づく損害賠償が認められるとしても、それ以外に動画投稿者の表現の自由その他の権利又は法律上保護される利益が違法に侵害されたとは認められず、不法行為の成立は認められないというべきである。」
  • 「もっとも、著作権侵害がないことを認識しながら、特定の動画投稿者について多数回にわたって著作権侵害申告を行い、動画の公開を妨げるような場合や、著作権侵害がないことを明確に認識してなくとも、著作権侵害申告を行う目的やそれに伴う行為の態様等の諸事情に鑑み、著作権侵害を防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合は、動画投稿者の法律上保護される利益が違法に侵害されたものとして、例外的に不法行為の成立が認められる場合があるというべきである。」
  • 「そこで、本件について検討する。
    本件において、Yは、過失の存在を積極的に争わないことから、著作権侵害があると考えて著作権侵害申告したことについてYに過失があったことは認められる。Xは、さらに、Yが著作権侵害のないことを認識しながら意図的に本件著作権侵害申告を行った旨主張する。しかし、Yが著作権侵害のないことを認識しながら意図的に本件著作権侵害申告を行ったことを認めるに足りる証拠はない
    また、Xは、Yが削除申告を行うに当たり、侵害された権利として当初「その他の権利」を選択していたのを後に「著作権」と変更したこと、著作権侵害申告が複数回にわたったこと、X動画3以外の控訴人の動画についての著作権侵害申告が第三者の名称を使用して行われたこと等から、Yの行為は悪質であり、Xの表現の自由を侵害し、社会的許容性のない違法なものである旨主張する。しかし、Xの主張に係るこれらの事情を考慮しても、上記のとおり、Yは著作権侵害のないことを認識しながら意図的に著作権侵害申告を行ったものではなく、基本的にYouTubeの著作権侵害に係る制度の範囲内での行動にとどまっていたといえるから、著作権侵害を防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合に該当せず、動画投稿者の法律上保護される利益が違法に侵害されたとは認められず、不法行為の成立が認められる場合には該当しないと認められる。」
  • 「したがって、本件においては、不正競争防止法2条1項21号(虚偽表示)、4条に基づく損害賠償の他に、不法行為の成立は認められないというべきである。」

コメント

1 将棋の棋譜の著作物性

本判決の事案では、Yは、訴訟においては、X各動画がYの著作権を侵害しないということを争わなかったため、裁判所は、X各動画はYの著作権を侵害しないという前提で判断をしている。
Yが著作権侵害の有無を争わなかった理由は執筆者には不明であるが、別件の大阪地裁の判決が、棋譜に関して、「本件動画で利用された棋譜等の情報は、被告が実況中継した対局における対局者の指し手及び挙動(考慮中かどうか)であって、有償で配信されたものとはいえ、公表された客観的事実であり、原則として自由利用の範疇に属する情報であると解される」と判示したこと(大阪地判令和6年1月16日(令和4年(ワ)第11394号))※1や、棋譜の著作物性の有無に係る判決の判断が公開されることによるリスクを考慮した上での判断である可能性がある。
一般論としては、棋譜は著作物(対局者の共同著作物)であるとする理解もあるが※2、著作物ではないとする理解もある※3

2 虚偽告知(不競法2条1項21号)

本判決の事案では、Yは、自らの本件著作権侵害申告が不競法2条1項21号に規定する不正競争行為(虚偽告知)に該当するとのXの主張も争っていない※4
不競法によれば、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」は「不正競争」とされ(不競法2条1項21号)、差止請求や損害賠償請求の対象となり得る(同法3条、4条)。
一般論としては、「知的財産権侵害など他人の権利侵害の事実や訴訟提起の事実を、相手方の取引先企業等に対して告知する行為は、訴訟活動として正当になされた行為であれば、正当な権利行使の一環として違法性を阻却すると考えられているが、そうでない場合には、本号に該当する場合がある」とされる※5

3 一般不法行為(民法709条)

最判平成23年12月8日民集65巻9号3275頁〔北朝鮮映画〕

知的財産法によっては保護されない情報の利用行為につきどのような要件で一般不法行為(民法709条)が成立するかという論点については、北朝鮮法人が北朝鮮において製作した映画が日本の著作権法6条所定の著作物に該当するか否かが問題となった事案における最高裁判決をまずは確認する必要がある(最判平成23年12月8日民集65巻9号3275頁〔北朝鮮映画〕)。
平成23年最判は、日本のテレビ局であるYが、北朝鮮法人であるX1が製作した「本件映画」を、北朝鮮における国民に対する洗脳教育の状況を報ずる目的で、X1の許諾を得ずに、テレビニュース番組内で合計2分8秒間にわたり本件映画の映像を放送したという事案において、次のとおり判示している(下線等執筆者)。

  • 「著作権法は、著作物の利用について、一定の範囲の者に対し、一定の要件の下に独占的な権利を認めるとともに、その独占的な権利と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で、著作権の発生原因、内容、範囲、消滅原因等を定め、独占的な権利の及ぶ範囲、限界を明らかにしている。同法により保護を受ける著作物の範囲を定める同法6条もその趣旨の規定であると解されるのであって、ある著作物が同条各号所定の著作物に該当しないものである場合、当該著作物を独占的に利用する権利は、法的保護の対象とはならないものと解される。したがって、同条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。」
  • 「これを本件についてみるに、本件映画は著作権法6条3号所定の著作物に該当しないことは前記判示のとおりであるところ、X1が主張する本件映画を利用することにより享受する利益は、同法が規律の対象とする日本国内における独占的な利用の利益をいうものにほかならず、本件放送によって上記の利益が侵害されたとしても、本件放送がX1に対する不法行為を構成するとみることはできない。」

調査官解説によれば、平成23年最判は、「著作権法の規律対象とする利益については、それを保護する、保護しないを含めて著作権法の制定により決定されており、同利益については、著作権法で保護されないとすれば、原則として、別途不法行為が成立するものではないことを示したものであるといえる」とされる※6
平成23年最判の後の下級審判決の傾向については、「この最高裁判決〔執筆者注:平成23年最判〕を一般化したようなフレーズが繰り返されており、結論として不法行為の成立を認めたものは公刊されている限り存在しない。そのため、近時は、知的財産法によって保護されない情報の利用行為については、原則として不法行為が成立しないという考えが広まっているようにも思われる。」とされている※7
なお、平成23年最判は、要旨、未承認国家である北朝鮮の法人であるX1が日本の裁判所に対して自らの著作物の保護を求めることができるか、また、著作物としては保護されないとしても民法709条で救済されないか、という点について判断を示したものであり、平成23年最判が「知的財産法によっては保護されない情報の利用行為につき一般不法行為(民法709条)が成立するか」という論点にまで射程を及ぼすかについて疑問も呈する見解もある※8 ※9
なお、本判決に先立ち公表された東京高判令和6年6月19日(令和3年(ネ)第4643号)〔バンドスコア模倣〕は不法行為の成立を肯定しており、「著作権法の保護を受けない情報の利用行為について、平成23年最判以降に初めて不法行為の成立を認めた公表裁判例である。」※10と評されている。

本判決について

本判決は、一般不法行為(民法709条)について、「著作権侵害を防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合」に限って例外的に一般不法行為(民法709条)が成立し得ると判示している。
本件では、棋譜が著作物ではないことを前提に、Yに一般不法行為が成立するかが問題となっており、本判決は一般不法行為の成立のためには例外的な事情が必要という考え方から、「著作権侵害を防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合は、動画投稿者の法律上保護される利益が違法に侵害されたものとして、例外的に不法行為の成立が認められる場合がある」と判示したものと考えられる。
本判決の事案に平成23年最判の射程が及ぶか否かについては両様の考え方があり得るが、平成23年最判の射程が直接に及ぶか否かとは別に、「学説上、著作権法が規律の対象とする領域においては、権利・法益侵害に関して完結的な選択・決定がされているため、その領域で生じた不法行為ないし権利・法益侵害に関しては、原則として一般不法行為が成立しないという理解が有力であ」※11るとされており、本判決が一般不法行為の成立要件を限定的に解したことはこうした理解を前提としているものと思われる。
なお、本件で一般不法行為の成否が問題となった行為は、Yによる「本件著作権侵害申告」であり、被侵害利益としてXは「表現の自由」を主張していた。不競法2条1項21号の被侵害利益としては「営業上の信用」が想定されていると考えられるため、「本件著作権侵害申告」が不競法2条1項21号に該当することについては争いがないとしても、一般不法行為については異なる被侵害利益が主張されている事案であった。

著作権侵害申告と不当訴訟との対比

上述のとおり、本判決の事案で一般不法行為の成否が問題となったのは、Yによる「本件著作権侵害申告」、すなわち、X(YouTuber)による動画投稿が著作権侵害である旨をYがYouTubeに対して申告した行為であった。
一般に、他人に対する訴訟提起が不法行為となるための要件について、最高裁は、次のとおり判示している(最判昭和63年1月26日民集42巻1号1頁。下線等執筆者)。

  • 「民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。けだし、訴えを提起する際に、提訴者において、自己の主張しようとする権利等の事実的、法律的根拠につき、高度の調査、検討が要請されるものと解するならば、裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となり妥当でないからである。」

以上のとおり、他人に対する訴訟提起については、結果的に訴訟提起者(原告)が敗訴したとしても、訴訟提起が不法行為となるケースは相当に限定される。
なお、訴訟提起が上記要件を満たし、不法行為法上違法となる場合(いわゆる不当訴訟の場合)には、慰謝料請求も可能である。
裁判を受ける権利は憲法32条により保護されていることや、裁判所以外の第三者に対する申告は不競法2条1項21号の守備範囲とも思われること等に照らせば、「訴訟提起」と「YouTubeに対する著作権侵害申告」を同列に語ることはできないかもしれないが、著作物性の有無は基本的に事実レベルの問題ではなく評価レベルの問題であること、本判決のXはYouTubeの著作権侵害に係る制度を前提としてYouTubeを利用していることからすれば、結果的にXによる著作権侵害が否定されるとしても、Yによる申告が直ちに不法行為となるとは限らないという点では、昭和63年最判も一定程度参考になる可能性がある。

※1:なお、大阪地判令和6年1月16日(令和4年(ワ)第11394号)は、原告が、被告の配信する棋譜情報を利用した動画を配信することは、不法行為を構成しないとしていたが、控訴審は、日本将棋連盟が行うリアルタイムの棋戦の放送・配信のビジネスモデル等を詳細に認定した上で、「少なくとも控訴人〔被告〕が棋戦をリアルタイムで配信するまさにそのときになされた被控訴人〔原告〕による本件動画の配信は、自由競争の範囲を逸脱して控訴人の営業上の利益を侵害するものとして違法性を有し、不法行為を構成するというべきである」と結論付けた(大阪高判令和7年1月30日(令和6年(ネ)第338号ほか))。
※2:加戸守行『著作権法逐条講義〔7訂新版〕』(CRIC、2021年)126頁。
※3:例えば、骨董通り法律事務所編『エンタテインメント法実務〔第2版〕』(弘文堂、2025年)452~453頁は、棋譜について、「たとえ勝利のためのルートは複数あるとしても、それを表現するには、駒を将棋盤に打つという方法しか存在しない。また、棋士は、他人に見せるために対局をしているわけではなく、自身の勝利を追及しているため、スポーツの試合スコアと同様、事実の経過であり、創作的表現とは言い難いようにも思える。」とし、大阪地判令和6年1月16日(前掲※1参照)を挙げた上で、「裁判所は、棋譜が『著作物』に該当しないと考えていることがうかがわれる。」と述べる。
※4:本判決の事案でYが不競法2条1項21号該当性を争っていない理由について、WLJ判例コラム第348号〔松尾剛行〕6頁は、「棋譜事件控訴審〔執筆者注:大阪高判令和7年1月30日〕でリアルタイム配信だったからこそ営業妨害的要素が強いと認められたように、本件〔執筆者注:知財高判令和7年2月19日〕ではその営業妨害的要素が弱く、だからこそ、一審被告は(財産的損害に関する限り)侵害論において争わなかったものと理解される。」としている。
※5:経済産業省知的財産政策室編『逐条解説 不正競争防止法〔令和6年4月1日施行版〕』162頁。
※6:最判解民事篇平成23年度734頁〔山田真紀〕。
※7:田村善之編著『知財とパブリック・ドメイン 著作権法篇』(勁草書房、2023年)39頁〔上野達弘執筆箇所〕。なお、本文献の発行後に東京高判令和6年6月19日(令和3年(ネ)第4643号)〔バンドスコア模倣〕が下されている。
※8:前掲(※7)上野40~41頁は、「北朝鮮事件の判決は、あくまで『著作権法6条各号所定の著作物に該当しない著作物』について判示したものに過ぎず、少なくとも『著作物』でないものについては、同判決の直接の射程外と考えるべきであろう。」としている。
※9:なお、小泉直樹ほか『条解 著作権法』(弘文堂、2023年)24頁〔横山久芳執筆箇所〕は、平成23年最判「の趣旨は、本法〔執筆者注:著作権法〕の保護を受けない情報の利用行為一般に妥当するものと解されている」とし、「本法で保護されない情報の利用行為が不法行為に該当するためには、本法が規律の対象とする利益と異なる利益が侵害されたと評価し得ることが必要となる。」とする(島並良ほか『著作権法入門〔第4版〕』(有斐閣、2024年)78~80頁〔横山久芳執筆箇所〕も同旨と考えられる。)。上野は平成23年最判の「直接の射程」ではないと述べ(前掲(※8))、横山は平成23年最判の「趣旨」は妥当すると述べており、両説は結論において同じように思われる。
※10:ジュリスト臨増1610号234頁〔栗田昌裕〕。
※11:前掲(※10)栗田235頁。

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