投資信託受益権の元本償還金等は相続により当然に分割債権となるか?

共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき、相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合に、共同相続人の1人が自己の相続分に相当する金員の支払を請求することの可否

最判平成26年12月12日

●事案
1 Xは、平成8年10月に死亡した亡Aの子である。亡Aの法定相続人は、Xを含めて3名であり、その法定相続分は各3分の1である。
2 亡Aは、その死亡時において、販売会社であるB証券株式会社(その後、B証券はYに吸収合併された。)から購入した複数の投資信託(以下「本件投資信託」という。)に係る受益権を有していた。
3 平成8年11月から平成10年までの間に発生した本件投資信託の収益分配金及び平成16年に発生した本件投資信託の元本償還金は、B証券又はYの亡A名義の口座に預り金として入金された(以下、この預り金の返還を求める債権を「本件預り金債権」という。)。

●原判決
1 以上の事実関係を前提として、原判決は、本件預り金債権は当然に相続分に応じて分割されるものではないなどとして、Xの請求を棄却すべきものとした。

●判旨
本判決は、共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき、相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し、それが預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合、上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の1人は、上記販売会社に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない旨判断して、Xの上告を棄却した。

●コメント
共同相続された委託者指図型投資信託の受益権が相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるかについては、最判平成26年12月12日が否定しましたが、本判決はこの判例を前提として、元本償還金又は収益分配金が発生し預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合に、共同相続人の1人が自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができるかに同じく否定しました。
ですので投資信託受益権、元本償還金、収益分配金については遺産分割協議を踏まえないと回収できなことになります。