最高裁決定 平成25年4月26日 会社更生手続における強制執行停止のための担保

最高裁決定 平成25年4月26日
【事案の概要】
本件は,更生会社である株式会社A(平成24年3月1日に商号をB株式会
社に変更した。以下,この商号変更の前後を通じて「A」という。)の管財人であ
る相手方が,Aが仮執行宣言付判決に対する控訴の提起に伴って立てた担保の取消
しの申立てをした事案である。相手方は,Aの更生手続において,上記担保の被担
保債権である損害賠償請求権につき更生債権又は更生担保権としての届出がされな
かったため,更生計画認可の決定により,Aは同請求権につきその責任を免れるか
ら,担保の事由が消滅したと主張している(以下,更生会社が更生債権又は更生担
保権につきその責任を免れることを「失権」という。)。

【判旨】
1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い,金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた場合,債権者である被供託者は他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有するものとされている(民訴法405条2項,77条)。これは,被供託者が供託金につき還付請求権を有すること,すなわち,被供託者が,供託所に対し供託金の還付請求権を行使して,独占的,排他的に供託金の払渡しを受け,被担保債権につき優先的に弁済を受ける権利を有することを意味するものと解するのが相当であって,これをもって被供託者に特別の先取特権その他の会社更生法2条10項所定の担保権を付与したものと解することはできない。
2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保が立てられた場合,被供託者は,債務者につき更生計画認可の決定がされても,会社更生法203条2項にいう「更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利」として,供託金の還付請求権を行使することができる。
3 そして,債務者につき更生手続が開始された場合,被供託者は,更生手続外で債務者に対し被担保債権を行使することができなくなるが,管財人を被告として,被供託者が供託金の還付請求権を有することの確認を求める訴えを提起し,これを認容する確定判決の謄本を供託規則24条1項1号所定の書面として供託物払渡請求書に添付することによって,供託金の還付を受けることができると解される。

【コメント】
会社更生手続における解放金の扱いというかなりマイナーな論点でした。更生手続中、債権者は更生手続によることなく供託金を回収することができたわけです。更生担保権ではなく、更生債権の届出をしている以上、最高裁と同じ枠組みですので、粛々と供託金の回収をしなかったのでしょうか?

【参照条文】
会社更生法
2条
10  この法律において「更生担保権」とは、更生手続開始当時更生会社の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権及び商法 (明治三十二年法律第四十八号)又は会社法 (平成十七年法律第八十六号)の規定による留置権に限る。)の被担保債権であって更生手続開始前の原因に基づいて生じたもの又は第八項各号に掲げるもの(共益債権であるものを除く。)のうち、当該担保権の目的である財産の価額が更生手続開始の時における時価であるとした場合における当該担保権によって担保された範囲のものをいう。ただし、当該被担保債権(社債を除く。)のうち利息又は不履行による損害賠償若しくは違約金の請求権の部分については、更生手続開始後一年を経過する時(その時までに更生計画認可の決定があるときは、当該決定の時)までに生ずるものに限る。

会社更生法
(更生計画の効力範囲)
第203条  更生計画は、次に掲げる者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する。
一  更生会社
二  すべての更生債権者等及び株主
三  更生会社の事業の更生のために債務を負担し、又は担保を提供する者
四  更生計画の定めるところにより更生会社が組織変更をした後の持分会社
五  更生計画の定めるところにより新設分割(他の会社と共同してするものを除く。)、株式移転(他の株式会社と共同してするものを除く。)又は第百八十三条に規定する条項により設立される会社
2  更生計画は、更生債権者等が更生会社の保証人その他更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利及び更生会社以外の者が更生債権者等のために提供した担保に影響を及ぼさない。

民事訴訟法
(担保の提供)
第四百五条  この編の規定により担保を立てる場合において、供託をするには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
2  第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。

(担保物に対する被告の権利)
第七十七条  被告は、訴訟費用に関し、前条の規定により供託した金銭又は有価証券について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。