東京地方裁判所判決 平成24年3月16日



東京地方裁判所判決 平成24年3月16日

【事案】

・賃貸借契約書において「乙(賃借人)が負担する諸費用のうち、本物件の使用に伴う電気料・上下水道料・看板使用料は、甲(賃貸人)または甲(賃貸人)の指定する者の計算に基づき、甲(賃貸人)に支払うものとする。」と規定。

・本件ビル全体にB株式会社(以下「B」という。)から高圧の電力を引き込み、これを賃貸人である原告が設置するキュービクル(高圧で受電した電力を各賃借人の使用機器に合わせた電圧に降圧し、分配する機器)により降圧して、各賃貸部分に供給する方法。

・原告は、同年7月使用分までの単価を1kwh当たり30円と定めていたが、同年8月使用分からの単価を1kwh当たり25円に値下げ。

・各月の末日に、原告が依頼する管理業者が、各賃貸部分の電気使用量を計測する電力量メーター(以下「専用メーター」という。)の数値を確認し、原告は、その数値から読み取れる各賃借人の電力使用量に原告が定める単価を乗じて、消費税を加えた金額を各賃借人が負担するべき電気料として請求。

・被告(賃借人)は、各月の電気料について、原告が採用する計算方法が不当であり、仮にそうでないとしても、原告が主張する電気料は高額にすぎるため、契約上認められる裁量の範囲を逸脱しているなどと主張。

【判旨】

・本件条項には、被告が原告に支払うべき電気料について、その課金方法や計算方法に関する記載はないこと、本件賃貸借契約締結の際に原被告間で具体的な取り決めがされた様子はうかがわれないことを考慮すると、特段、不合理なものでない限り、基本的には原告に委ねられたものと解するのが相当。

・原告が各賃借人に請求できる金額は、本件ビル全体についてBに支払う電気料に加えて、キュービクルにより降圧して各賃貸部分に電力を供給するため、合理的に必要と考えられる程度の諸経費を考慮した金額を基準にすべきものと解するのが相当。

・本件ビルは、高圧の電力を引き込み、これを原告が設置するキュービクル(高圧電流を降圧し分配する機器)で各賃貸部分に供給しており、電気料は原告又は原告の指定する者の計算によるとする本件契約は、特段、不合理なものではなく、原告の被告に対する各月の請求額は、その単価を1kwh当たり25円として計算する限度で、裁量の範囲を逸脱していない。



【コメント】

本判例の条項は、本条項と類似するものであり、比較的一般的なものであると思います。こうした条項においては、特段不合理でないものでない限り、基本的に賃貸人に委ねられたものとされましたが、単価については賃貸人の自由裁量によりいくらでも高くすることができるわけではなく、裁量の範囲内とした点において注意が必要です。賃貸人としては、賃貸借契約で単価を規定してしまう方が無用な争いがなくてよいように思われます。