弁護士法23条の2に基づく照会または裁判所による調査嘱託に対する報告を拒否した場合の金融機関の責任

大阪高裁平成19年1月30日 金融商事判例1263-25

<事案>

金融機関が弁護士法23条の2に基づく照会または裁判所による調査嘱託に対する報告を拒否したところ、 弁護士照会または調査嘱託をした者が金融機関に対し不法行為に基づく損害賠償請求をした。

<判旨>

●結論

損害賠償請求は認められない。

●理由

金融機関は弁護士法23条の2に基づく照会または裁判所による調査嘱託がなされた場合には、 顧客のプライバシーや顧客との秘密保持契約にもかかわらず報告をするべき公的義務を負う。

しかしながら、上記は公的義務であって弁護士照会や調査嘱託を利用した弁護士や依頼者個人に対する関係での義務ではなく、 個々の弁護士や依頼者がその権利として金融機関に対してその回答を求める権利を有するものではない。

<コメント>

上告・上告受理申立中。

<参考>

弁護士法23条の2

1 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、 公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があった場合において、当該弁護士会は、 その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基づき、公務所又は公私の団体に対して照会して必要な事項の報告を求めることができる。

民事訴訟法186条

裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署または学校、商工会議所、 取引所その他の団体に嘱託することができる。

以上